2013年6月20日木曜日

ハンチングの謎

ずっと以前、受注制作も手がけていたころの話です。
人形用のハンチング帽を作ってほしいとの依頼がありました。
実は私、ハンチングについて、キャスケットがぺしゃっとなったようなもんだという認識でいたから、そういうふうに作りました。お客様に写真をお見せしたところ、OKのお返事をいただいて、一件落着。
今思えば、事前調査が足りんというか、プロ意識欠如だったかなー。いや、全くお恥ずかしい。

その後、るんるんソーイングという裁縫サイトに子供用キャスケットの作り方を載せたとき、いちおうハンチングについても調べたんです。というのも、そのサイトには英語版も併設しているから、キャスケットとハンチングは似たようなものか、どういう違いがあるのか、知っておこうと思いまして。
しかしながら、よくわかりませんでした。

手持ちの英和辞典で"hunting cap"を引くと、『競馬の騎手がかぶる帽子と同じ型の、ビロードの狩猟家用帽子。いわゆる鳥打ち帽(ハンチング)とは異なる』という意味の記載が。
じゃあ我が国でハンチングと呼ばれているものは英語でなんというんだ。その疑問への解答は得られずじまい。
ちなみにキャスケット(casquette)はフランス語で、前ひさしのある帽子のこと。ハンチングも含むようです。キャスケットを英語でどう呼ぶのかは不明で、英語版には単なる"cap"と表記しました。

さらに歳月は流れ、このたび『ファッション工芸講座 帽子 基礎編(文化服装学院)』という本を手にする機会を得ました。
これは、帽子の歴史、分類、素材、用具、作り方テクニックなど、帽子について網羅した、なかなかすごい本です。
型紙を作るにしても、丸い頭に平面の素材をそわせるための理論まで詳解していて、応用が利くようになっています。高度な内容だから、基本的にプロのための書物といえましょうが、縫製の基礎ページでは、針の持ち方からボタンのつけ方まで懇切丁寧な説明があり、初心者でも本格的な帽子作りに取り組みたい人には役に立つでしょう。

そこにハンチングの作り方も載っていまして、おお、そうだ、これを父の日コンテンツにしようと、膝を打つ。

さっそく例図のとおり型紙を引いて試作しました。でもなんとなくシルエットが意にそわず、自己流で改変(改悪?)にチャレンジ。丸みを強めていせ込みを省略しましたが、長さがちぐはぐになったので、ほんの少しだけいせ込みする必要があるというハンパな仕様です。無理やり縫ってしまえるから問題はないでしょうが。

そしてページ作りに取りかかりました。
英語ページも当初は"Hunting cap"というタイトルで書き始めたのですが、そこで思い出した過去の出来事。それまで棚上げになっていた「ハンチングは英語でなんというのか」を、今度こそはっきりさせる必要が生じたのです。

現在の情報量は、昔(キャスケットを作ったころ)と比べると飛躍的に増加していますが、そのためにかえって探しにくい面もあります。
"hunting cap"で検索しても、いかにもハンチングな画像は日本語ページばかり(このことは、hunting cap とハンチングが別物という説を裏付けているような)。が、それは単に検索者が日本語ブラウザや日本語パソコンを使用しているせいかもしれないと、英語のページだけに設定し直しましたが、日本語ページが多いのは相変わらず。検索機能ってそんなに向上していないんですかね。

ともあれ、やっと見つけたのが、"flat cap (flatcap)"もしくは"cloth cap"・・・平たい帽子に布帽子。ふーむ。イギリスではそう呼ぶのです。スコットランドでは"bonnet"・・・ボンネット。えー? こりゃ、混乱するわ。
もともとはつばのないベレー帽みたいなものだったらしく、17世紀ころのロンドンの労働者階級の象徴っぽいアイテム。鳥打ちや狩猟などの貴族趣味とはかけ離れているじゃない。

とはいえ、日本語Wikiには『ハンチング帽(ハンチングぼう、Hunting cap)は、19世紀半ばからイギリスの上流階級で用いられるようになった狩猟用の帽子』とあって、日本人にとって一般的なハンチングの写真が掲載されています(しかしその画像は、英語Wikiの"flat cap"にあるものと同一だぞ)。
先の『ファッション工芸講座』にも『正しくはハンティングキャップ。19世紀末に英国の上流階級の人々が狩猟用ジャケットと同じ素材で製作したものが一般に広まり、1930年ころ流行した』と。詳細な書かれ方から、出典はしっかりしていると推測されますが、おかげで謎が深まってしまいました。
私個人は、英和辞典と英語Wikiのほうが信頼性が高いと思うんですけどね。

それやこれやでモタモタしていたので、結局今年の父の日には間に合いませんでした。
来年のために・・・ハンチング作り方

ハンチング帽

4 件のコメント:

どりーみー さんのコメント...

来年はダンディなお父様にハンチン具が届きますように。
いつも何にでも本格的で驚きます。

ルノ さんのコメント...

どりーみーさん、こんにちは。こんなさびれブログにお越しくださいましてありがとうございます。
わが老父は、とてもハンチングが似合うような紳士ではありませんが、まあ、娘の自作と思えばかぶってくれるでしょう。
むしろ父の日コンテンツとして、訪問者の皆様に作っていただきたかったのです。それには4月くらいまでにページをアップすべきだったんですよね。なにごとにもとろくて・・・。

匿名 さんのコメント...

初めまして、
何年もたってからの急なコメントで申し訳ないです。

猫のぬいぐるみの作り方を探していたところ御サイトにたどりつきました。
早速白黒猫ぬいぐるみの型紙をダウンロードして縫い方を参照しながら作らせていただいております。
頑張っても型紙が作れず落ち込んでいたのでとてもありがたく、感謝しております!

非常に図々しいお願いなのですが、
白黒猫の型紙の発展系のマズル~鼻の型紙の公開、もしくはヒントをいただけたらと思い書き込みました。
(なくなったこが凛々しい鼻とマズルなので似せようとしたところで座礁しています…)
本当にこのような申し出をしてしまい申し訳ないです。
不可であれば、スルーないし削除をお願い申し上げます。

失礼いたしました。

ルノ さんのコメント...

ありゃりゃ。いやもう、ほんとうに申し訳ございません。
放置ブログだもので、コメントをいただいたことに気づきませんでした。
手遅れかもしれませんが、ひとことふたこと。
発展系マズルというのは、はちわれの形のことだと思いますが、これは平面と同様です。
モデルの猫ちゃんの正面顔の写真を見ながら、見える通りに線を引けばよろしいのです。
猫によって千差万別ですので、個人個人で描き分けていただくのが一番です。

手間を惜しまないならば、白布で仮の頭を作り、わたを詰めたあと、ペンで線を引き、ほどいて型を取るという方法もあります。