2011年3月30日水曜日

理想のしもぶくれ

猫の頭の失敗作がゴロゴロしていると書きましたが、実は、ウサギの頭も猫に負けないほど転がっています。
新たな型紙を作るたびに番号を書き込んでいるのですが、数字が大きくなるにつれて情けなさも増すから、13作目以降は数えないことにしました。なお、ウサギはボディも変な形ばかりできて、それぞれの失敗を1として計上するから、まるまる13匹以上作ったわけではありません(自慢にならん)。



ウサギは犬や猫に比べると、シンプルで作りやすいはずです。どうしてうまくいかないんでしょう。

私はアニメやマンガのキャラクタードールもよく作りました。
犬夜叉や蔵馬の顔を正面から見ると、口が小さくて、あごはほとんどないに等しい。それなのに、横を向けばちゃんと角ばって大きなあごがあります。この正面顔にこの横顔はありえねーと異議を唱えたいけど、作者がそう描いているんだからしかたない。
どちらかを犠牲にするなどで、どうにかクリアして作り上げたわけですよ。

ウサギも事情が似ています。
正面と横の雰囲気が違うんです。前や斜め前から見るとかなり強度のしもぶくれなのに、横からはホッペが突出しているのが信じられないみたいな普通顔です。
私は実物のウサギを見たことがないので、そのギャップに混乱するのです。

子どものころは学校にウサギがいたような気がしますが、具体的な記憶はありません。そのウサギは当然「日本白色種」という、細面に赤い目の白ウサギで、あまりしもぶくれではなかったのでしょう。
誰でも知っている『因幡の白兎』を思い起こして、この白色種は古代から我が国にいたと誤解している人々も多いようですが、実は明治時代に海外からの輸入ウサギとかけあわせて作られたのだとか。あんなに和風なのに、ハーフだったんですねえ。

その海外のウサギといえば、バッグズバニー(Bugs Bunny)に代表されるように、激しいしもぶくれです。私の年代の日本人がウサギに対して抱くイメージにはちょっと距離があるんですね。
今や我が国のペットうさぎは海外型に圧倒されているので、しもぶくれでなきゃウサギ失格・・・と若い人々は感じているかも。

私が作るぬいぐるみの問題は、ホッペがなかなかふくらまないってことなのです。

ある部分をふくらますには、へこませたい部分にダーツを入れるのが常套です。で、いろんな向きに入れてみたけど、狙った形になってくれません。

最初はフリースを使いましたが、どうも感覚がつかめないと、ボア(ファー)に変えました。ボアによる試作はフリースよりも手間がかかるので、失敗の挫折感も大きいのです。しかしまあ、いくらミスってもめげずに挑戦し続けるところなんぞ、我ながらゴ立派(失敗しないほうが立派じゃないのか)。

自分で取り組むほかに、既存の型紙でウサギを作りました。ひとつは『はじめてのぬいぐるみ うさぎ・ねこ・いぬ・くま』、もうひとつは『鍋島知津子の動物のぬいぐるみ』・・・どちらもしもぶくれではありません。でもじゅうぶんにウサギっぽい。
案外しもぶくればかりにこだわることはないかも・・・と、妥協することになりました。

頭を縫ってわたを詰めただけでは、ウサギだかなんだかわからない、へんてこな球形です。目がつくと、少しばかり動物らしく見えてきます。耳をつければ、ウサギだと認めてもいいかな、と。







ただし、しもぶくれ度はまだ足りません。
もう少し大きなダーツにするとか、こめかみあたりを糸で引くという手もありますが、今はウサギにばかりかかずらってはいられません。将来適当な生地を見つけたら、別のポーズも作りたいと思います。

2011年3月5日土曜日

猫化粧

大人気の長毛猫メインクーンはアメリカ・メイン州の誇り。
メイン州の州立博物館では、メインクーンのぬいぐるみが売られているとか。それを買った日本人が「あまりメインクーンらしくない」と書いていましたが、写真を見た限り、猫らしくすらない代物のようです。ご当地の威信をかけてもっと立派なものを作れよ。とハッパかけたくなっちゃう。

とはいえ、メインクーンのぬいぐるみが猫の中でも最も難しい部類であるのも事実です。なにしろ模様が複雑怪奇。

むろん、単色のメインクーンもいます。メインクーンにはどんな色柄も許されるのです。
以前大きな黒猫を作って、月の輪猫と名づけました。実はこれ、メインクーンのつもりでした。

メインクーン、サイベリアン、ノルウェジアン・フォレスト・キャット・・・この3種は長毛の大型猫で、被毛の色や模様、目の色に制限がありません。細かい差異について解説した本も読みましたが、ぬいぐるみにしてしまえば、どれがどれでもかまわないって感じ。

ぬいぐるみを作る立場としては、種の特徴はシンプルでないとやりにくいのです。
だから私なりに、サイベリアンはマッカレルタビー、ノルウェジアン・フォレスト・キャットはマッカレルタビー+ホワイト、メインクーンはクラシックタビー・・・と、厳然たる区分けをしました(ちなみに、博物館のメインクーンはマッカレルタビー+ホワイトに見えます)。

いっとう複雑怪奇なのが、このクラシックタビーです。
クラシックタビーはアメリカン・ショートヘアでおなじみですね。大まかな縞模様で、ボディの横では固まって大きな斑点が生じています。額にはM字模様、目のまわりは淡い色で、目尻からはクレオパトラ・ライン、首にはちぎれかけのネックレス柄・・・こんなややこしい布はどこにも売っていません。

無理に作ろうとすれば、模様を描くのがてっとり早いとはいえます。

模様は『染めペン』という、布用フェルトペンを使います。手描き染料もいろいろありますが、たいていゴワゴワとなって、生地の風合いをそこねます。ハマナカ染めペンは仕上がりが柔らかくて、かなり許容できます。アリテックスカラーDYEはダメです。

あと、薄い色はパステルで塗るという手もありますが、私はもっぱら粉タイプのアイシャドウを利用します。けっこうしっかりついて落ちにくいようです。

染める場合、薄い色を濃くすることしかできません。しかもファーの奥までしみこまず、表面に色をつける程度になります。ロングヘアだと特にそうです。
ぬいぐるみの本で、黒い犬の眉あたりにある白いポチをアクリル絵の具で描く例を見ましたが、やや不自然な印象もありました。ここはくりぬいて白いファーを縫いつけたほうがいいようです。

それやこれやを考えつつ、ブラウンクラシックタビーのメインクーンを試作しました。
全体的に濃い目の茶色ですが、目のまわりが一番薄い色だから、使用したのはベージュのロングファーです。口と顎あたりは白い短毛ファー。

メインクーン頭

顔に色をつけるのは、お化粧しているみたいで、なかなか面白い作業です。が、手間はたいへん。おまけにどうもメインクーンらしくなりません。頭部だけで力尽きました。
我が家には失敗した猫の頭がゴロゴロしています。