2009年9月25日金曜日

猫の手

ぬいぐるみを作る際は、立つか座るか、まずポーズを決めるのが常です。中身をしっかり詰めるので、いったん出来上がれば、その姿勢は崩れません。

手足が動いて自由にポーズをつけられる猫ぬいぐるみを作ることは、長年の悲願であります。悲願とはオーバーだけど、服でごまかせない動物は体型がもろ見えるから難しいのです。

四つ足獣はおおむね同じ形をしています。なぜ犬でなく猫なのか。
猫というものは「いかにも猫らしいポーズ」を持っていて、ただ立ったり座ったりしているだけである程度さまになる犬よりも、ポーズをつける楽しみが大きく、ずっと作り甲斐がありそうに思えるのです。

身近に本物の猫がいれば、なでたり触ったり曲げ伸ばしさせたり、サイズを測ったりして研究も可能なのに・・・。
もっぱら書物から推測するのみです。

スフィンクスなど無毛猫は骨の形状がわりとはっきり出ています。でも動きのメカニズムまではわかりません。

ちょっと不思議だったのは、前脚の曲がり方。普段立っていればまっすぐです。それがちょっかいをかけるときには、関節などありそうもない部分でちょんと曲がるんですね。

これはもっと追究する必要があるぞ。
と、猫の骨格図を調べたら・・・なんと前脚は4箇所で曲がる、つまり5つのパーツに分かれていたのです。こんなに複雑とは知らなかったー。
例の部分は「手根骨」と呼ぶそうで、人間なら手首に相当するのかな。

それやこれやで試行錯誤を重ねておりますが、完成の日はいつ?

首なし猫

2009年9月19日土曜日

眼の中の星

中原中也といえば、例の帽子をかぶった写真が思い浮かびます。かなりの童顔で(って、夭逝したんだから当然か)、夢みるような瞳の。

実はあの写真、本人の手で修正が施されていると、以前何かで読みました。眼の中の光を描き加えるとかしたらしい。
あの時代、自分の肖像写真にそんな細工をする男性がいたとは、ちょっとびっくり。ずいぶんなナルシストだったのね。
結果としては成功のようです。

大きなおメメにお星様キラキラは、かつては少女マンガの特権でした。
男性の手による美少女イラストなどでは、眼の中の白い部分が異様に大きくて、虹彩がほとんど白なんてのも見かけます。

眼の中に光があると表情がいきいきするから、人形の顔を描くときにはたいてい入れます。
昔は省くこともありました。それはそれで、ぼうっとした感じがよろしいものです。

天草四郎

それはともあれ、私も中也を笑ってなんかいられません。修正ならよくやるんですよね。
主にサムネイルを作るときです。サムネイルは大きい写真を縮小します。離れたところから小さい写真を撮るよりも、画質としてはましだからです。

一番小さいサムネイルは61×61ドットです。この半端な数字の理由は自分でもわからないけど、昔からの習慣。あのころはナローバンドで、サーバーの容量もわずかだったしねえ・・・。

これほど縮めると、眼の中の光がつぶれてほとんどなくなってしまいます。
そこで縮小前に、光を拡大しておくのです。ついでにホッペや唇を赤くして、メリハリをつけることも。
そのままだとちょっとヘンだけど、小さくすればそこそこ目立たなくなるみたいです。

例:
上が未修正で縮小。下は修正して縮小。

修正前未修正で縮小

修正後修正して縮小

宝塚の人の舞台メークをアップで見ると不気味だけど、遠目には美しいでしょ。それと同じ、かな? (失礼しました。)

2009年9月17日木曜日

脱脂綿

人形作りで一番億劫なのが指詰めです。
実際にやってみるとそんなに難しい作業でもないのですが、なかなか取りかかる気になれないのです。

なぜだろうと改めて考えてみました。
人形の中身はおおむねポリエステルわたですが、指には脱脂綿を詰めます。使っているのは大きなサイズの医療用脱脂綿で、広げると1メートル四方くらいになります。

脱脂綿

脱脂綿って、裂いたりちぎったりするたびに細かいクズが散らばり、舞い上がるのです。
これがイヤなんだー。
マスクが必要だし、扇風機もかけられないし。

こんなものを医療現場で使って、傷口にかけらが残ったりしないのかしら。

ポリエステルわたは、まあクズやホコリは少ないほうです。いちおうマスクはかけますが。
ポリエステルの前は純綿パンヤを使っていました。舞い上がるかけらの量は脱脂綿の比ではなく、掃除はたいへんだし、往生しました。

指みたいに固い部分はポリわたでは頼りないので、どうしても脱脂綿が必要です。安いタオルを使ったこともありますが、脱脂綿ほど融通が利きません。

手の指は針金を入れるからポリわたは無理みたいだけど、足の指は代用できないだろうか・・・。

これまで爪先は布関節人形で解説している方法を採ってきました。棒状に巻いた脱脂綿を並べて詰めていくのです。

布関節人形の足作り

それをやめて、土台の爪先にミシンをかけて5つに分割し、そこにポリわたをぎゅっと詰めればけっこう固くなります。
脱脂綿は指よりも長く詰めるから、足の甲が膨らまずに済みますが、この方法だとそうもいきません。そこで甲の部分に厚手の布を裏打ちしました。

仕上がりは脱脂綿と大差ないというか、左右がそろうからけっこういい出来のようです(脱脂綿を巻く作業は目分量でやるから、わりとばらつきが出るのです)。

左は詰める前、右が詰めた後。

足の土台

作業工程が増えて面倒なのが難点です。今後も続けるかどうかは検討中。

いつもおんなじような顔の人形を作っていますが、その裏では毎回いろいろ工夫を凝らして試行錯誤しているのですよ。

2009年9月14日月曜日

段ボール箱

人形などを輸送するのに、段ボール箱は欠かせません。
とりわけうちでは人形が大きいので、箱も大きめ。近所に梱包資材店があるのは幸いなことです。

段ボール箱はサイズの種類が少なく、いつもぴったり合うとは限りません。
大きな等身大人形は、「特大」サイズの箱をふたつ継ぎ足して入れます。
身長60センチくらいの人形はサイズ「中」で余るのですが、「小」には入らないからやむを得ず使っています。

新たに買った中サイズの箱を包装紙で包もうとしたら、包装紙が不足気味でした。なんでだろー、こないだはこの幅でちょうどよかったのに・・・。メジャーを当てたら、なぜかいつもの中サイズよりも周囲が数センチ大きい箱でした。

包装紙を継ぎ足してもいいのだけど、まずいことに、この大きさだと送料が200円アップしてしまいます。
急遽箱を解体し、折り目をつけて縮めました。手間もかかったし、箱もみっともなくなったし、さんざんです。
同じサイズの箱なのに大きさがまちまちというのは困ったものです。

人形が飛ぶように売れるようになれば、特注で箱を製作するのにねー・・・そんな日は永遠に来ませんって。

段ボール箱

2009年9月13日日曜日

ボンベイ

先だってボンベイという猫のぬいぐるみを販売しました。
そのお客様から写真がたくさん送られてきました。そのうちの1枚をご紹介します。

届いた商品の写真を撮って送ってくださるかたがときたまいらっしゃいます。
どんな環境に置かれているかわかるので、たいへん嬉しく思います。

今回のおうちではボンベイを飼っているのです。それで猫ちゃんと並んで記念撮影というしだい。
本物と見比べると、うんと見劣りしますなあ・・・。もっと研鑽しなければ。

ボンベイ猫

2009年9月4日金曜日

黒猫ぬいぐるみ

動物のぬいぐるみは余技だから販売しないことにしています。
犬はともかく、猫のほうはいまだ試行錯誤の段階であり、自信を持って売れるできばえではないと思うのです。特に顔がね・・・いまいちカワイクない。

それでも強いご要望に断りきれず売ったことが何度かあります。値段は1匹3,000円~7,000円くらいでばらつきがあり、結果としてアコギなケースもあったかなと感じたりして。手間ひまだけ考慮すれば、どれも安すぎるんですけど。

数年前、どうしても黒猫(ボンベイ)が欲しいと、男性から電話がありまして、「いくらで買うのか」と問い返したら、「30,000円くらい」というお返事。
冗談でしょ。あんな変な顔の猫で30,000もふんだくったら、あとで恨まれそう。
ということでお諦め願いました。

ウェブでは受注制作で何万円もするそっくりペットのぬいぐるみが大人気で、数か月~数年待ちってところもあるようです。
もっと技を磨いてそういうビジネスに参入したら、私の生活も上向くかも。でもやっぱり本職は人間の人形だから・・・と固執してしまうのです。

ところでそのボンベイですが、その後顔をちょっと作り変えて(多少ましになったけど、まだまだ)、写真もアップし直しました。
黒猫ボンベイ
そしたら、ボンベイが欲しいという人がまた現れました。いくら出すかと訊いたら、10,000円だって。
なんだか気がとがめるから、半額にしてしかも送料無料ってことでお送りしました。実物が気に入らなくても、返品は受け付けませぬ。


付記:
その後在庫の山を片付けようと、販売を始めました。押入れがいくぶんすっきりしてきました。